2022年4月4日付で東京証券取引所において市場区分の見直しが行われます。
これは、従来の5つの市場区分のコンセプトがあいまいで投資家にとって利便性が低く、代表指標であるTOPIXが一部の流動性の低い銘柄を含めたすべての銘柄で構成されることなどにより、市場を代表するものとなっていないことや複数市場構造でありながら市場一部へのステップアップ基準が低いなど、上場会社の持続的な企業価値向上の動機づけとなっていないことが課題とされており、これに対応するためです。
見直しにより「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の三つの市場区分に再編し、プライム市場については高いガバナンス水準を備えた企業、スタンダード市場では基本的なガバナンス水準を備えた企業として定義し、あわせてコーポレートガバナンスコード(CGC)を改訂して、これらの企業が兼ね備えるべきガバナンス水準の強化を求めています。
改訂CGCについてはプライム市場向けのものについては2022年4月4日以降に開催される定時株主総会の終了後に、プライム・スタンダード共通のものについては12月までに対応結果を提出する必要があり、現在JASDAQ又はマザーズに上場している会社でプライムもしくはスタンダード市場に上場を目指す会社は適用すべきCGCの範囲が大幅に増えることになります。
改訂CGCでは「取締役会の機能発揮」「サステナビリティをめぐる改題への取り組み」「人材の多様性の確保」など企業の中長期的な企業価値向上につながるような対応を求められており、主な改訂内容は下表のとおりです。
項目 | CGC | 企業と投資家の対話ガイドライン |
取締役会の機能発揮 | ・プライム市場上場会社において、独立社外取締役を3分の1以上選任(必要な場合には、過半数の選任の検討を慫慂) ・経営戦略に照らして取締役会が備えるべきスキル(知識・経験・能力)と、各取締役のスキルとの対応関係の公表 ・他社での経営経験を有する経営人材の独立社外取締役への選任 ・指名委員会・報酬委員会の設置(プライム市場上場会社は、独立社外取締役を委員会の過半数選任) | ・各取締役や法定・任意の委員会についての実効性評価 ・独立社外取締役を取締役会議長に選任することなども含めた取締役会における監督の実効性確保 |
企業の中核人材における多様性の確保 | ・管理職における多様性の確保(女性・ 外国人・中途採用者の登用)についての考え方と測定可能な自主目標、その状況の開示 ・多様性の確保に向けた人材育成方針・ 社内環境整備方針をその実施状況とあわせて公表 | – |
サステビリティを巡る課 題への取組み | ・サステナビリティについて基本的な方針を策定し自社の取組みを開示 ・プライム市場上場会社において、TCFD又はそれと同等の国際的枠組みに基づ く気候変動開示の質と量を充実 | ・サステナビリティに関する取組みを全社的に検討 ・推進するための枠組 み整備(サステナビリティに関する 委員会の設置など) |
上記以外の主な課 題 | ・上場「子会社」において、独立社外取締役をプライム市場上場会社においては過半数/それ以外の市場の上場会社においては3分の2以上選任、又は利益相反管理のための委員会の設置 ・プライム市場上場会社において、議決権電子行使プラットフォーム利用と英文開示の促進 | ・バーチャル方式により株主総会を開催する場合の株主の利益の確保 ・有価証券報告書の株主総会開催前の開示 ・株主との対話にあたって、「筆頭独 立社外取締役」の設置 |
以上のように取締役会の構成の見直しやTCFDへの対応(気候変動リスクへの対応)など、改訂内容は様々な項目にわたっており、各企業においては改訂CGCへの対応を組織的かつ適用スケジュールを意識して進めていく必要があります。
社外取締役への就任要請や改訂CGC対応のプロジェクトマネジメントにお困りの企業がありましたら、ぜひ当事務所にご相談をいただければと思います。